手塚治虫の火の鳥の未来編は西暦3400年の世界を描いている。人類は地下にある5つの都市で暮らし,政治は,過ちを起こしやすい政治家に代わって,人工知能が決めている。ある些細な出来事を巡り,人工知能同士が自分の計算の正しさを主張し,争いとなり,遂に,核戦争を起こしてしまい,地球上の生物は絶滅する(その後の生命再生の話も面白い)。
最近,人工知能が新たな段階を迎えた。
人類が生み出した最も高度なゲームに囲碁がある。約20年前,将棋と囲碁のプロ棋士,各50名に,人工知能に負ける日が来るか尋ねた。それに対して,将棋棋士49名は負けることを認め,囲碁棋士50名全員が負けないと答えた。20年経ち,遂に人工知能が囲碁で最強棋士に勝つようになった(将棋やチェスではとうに人工知能が勝っている)。
人工知能の世界はこれから急速に進化していく。私たち法曹の世界では,当面,私たちが人工知能に事実関係を情報として与えると(正確に事実関係を入力することも困難である。),人工知能が,先例,判例,学説などを,瞬時に,情報として私たちに提供してくれるようになるだろう。
その膨大な情報の中から,私たちは,自らの価値判断に照らして,どれかを取捨選択し,あるいは未知の判例等を作り出す作業が必要になるだろう。その価値判断は人間がするしかない。
人工知能の未来が,火の鳥のように人類にとって悲惨なものとなるか,あるいは人類を豊かなものに変えていくかは,私たちの価値判断に基づく選択にかかっている。