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遺言について(その7)(弁護士 松浦 里美)

  • 2014.4.10

これまで,遺言の3つの方式(自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言)について,それぞれの名称と,良いところ,困ったところをそれぞれ挙げました。
今日は,それぞれの名前についてまできちんと覚えていただくのは結構です。こんなイメージの遺言があったな。という程度に理解していただければ,それで大丈夫です。
もう一つ,申し上げておきたいのは,それぞれ有効に作成された場合には,遺言書の作成方法によって優劣はない,という点です。例えば,公正証書遺言はお金をかけて作っているので自筆証書遺言よりも優先する,ということはないのです。
それでは,よい遺言をつくるためにはどうすればよいのでしょうか・・・。それは,弁護士に相談されるのが一番だと思います。今までの話を読まれて,「何だ。自分ひとりでもできそうだぞ。」という風に思われた方もいらっしゃると思いますが,遺言には,いろいろなお作法や決まり事があるのです。例えば,自筆証書遺言の場合には,裁判所で「検認」という手続を行うことが必要になります。これは,裁判所で遺言書の内容を確認する手続です。とすると,封をしている遺言書の場合には,裁判所ではじめて開封されることになります。確認できたときには,お葬式はすでに終了している場合がほとんどでしょう。そうすると,いくら自筆証書遺言に「自分のお葬式はこうしたい!」と書いたとしても,そのことが残された人に伝わらないということもあります。
また,税金の問題も忘れてはいけないところです。よかれとおもって財産を相続させたことで,かえってその人を苦しめることはあってはならないことです。
話は少し変わりますが,現在はペットを飼われている家もとても多いですね。自分の飼い犬・飼い猫をまさに「家族」のようにかわいがっている人も少なくないと思います。では,自分が亡くなったあとにのこされたペットはどうなってしまうのか・・・。
遺言の決まり事の一つとして,財産をあげる相手というのは,「個人」または会社などの「法人」に限られています。ペットに直接財産をあげることはできないのです。そこで考えられるのが,「ペットの世話をしてくれることを条件として個人に財産を相続させる」という方法です。法律上のことばでは負担付遺贈といいます。その場合でも,相手が本当にペットの世話をしてくれるのかどうかの意思を確認する必要がありますし,もしもペットの世話をしてくれない場合の対処を考えておかなければなりません。遺言執行者という,遺言書の内容を実現する役割の人を決めておくことも一つの対処方法です。この点についても,ぜひ弁護士に相談してみてください。

いろいろ申しあげましたが,前に遺言には,3つの大きな目的,①遺産に関する紛争(トラブル)の予防,②自分が死んだあとに新たな権利義務を,③遺族や社会に対する最後のメッセージがあるとお話しました。この3つのどれに一番力を入れたいか,それぞれの中身はどのようなものにするかを考えることで,その人らしい遺言を作ることができるのです。