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毎年書きたい遺言書(弁護士 松田 幸子)

  • 2022.10.12

日本は世界の国々で初めて未曾有の超高齢化社会に入り、壮大な実験を迫られています。人生の終章をどう生きるかが問われる時代となりました。
寿命が分かるなら、節税をしつつきれいに生前贈与を終え、永代供養代程度を残してあの世に旅立ちたいのですが、なかなかそうもいきません。遺言を作成するときのお勧めは、相続税の申告書を作ってみて、相続税の負担が過大でせっかくの遺言が有難迷惑にならないように考えることだそうです。もっとも、その時の税制や資産が死亡時も同じである保障はないのですから、これすら絶対ではありません。
自筆証書遺言は、安価で一番手軽な遺言書です。本文をすべて手書きし、日付と氏名を記載し押印しなければなりませんが、最近の法改正で財産目録のみはパソコンで作成できるようになったことはご承知かと思います(但し、財産目録1頁ごとに遺言者が署名押印する必要があります)。様々な手数料(預かり一件3900円他)はかかりますが、法務局の自筆証書遺言預かり制度もあります(家裁の検認が不要となります)。また、死亡前後にわたって資産管理をデザインする家族(遺言)信託の利用も勧められています。
どんな方式にするにせよ、一番大事なのは前文ではないかと思います。後世に託す最後のメッセージです。残すもののランクとして,「財は下、名は中、人は上,言葉が最上」とのこと。
「私は○○を大事に生きてきた。」「あなたに会えてよかった。」「おかげで豊かな楽しい人生だった。」「あなたに救われた。感謝している。」「あの世からあなたの幸せを願っている。」などなどでしょうか。この前文を考えると遺言書作成は楽しいのではないかと思います。後世へのラブレターですから毎年書き換えてもいいですね。それと、ネットで検索すると、遺産からの寄付を求めるサイトが数多くあります。どれか自分の価値観にあうところに少し寄付するのもいいかもしれません。
何も残せる財産がない方も,後世へのラブレターを書いてみると、日々生きることが楽しくなるのではないでしょうか。