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弁護士コラムを更新しました。「動物愛護の現場で(弁護士 真早流 踏雄)」

「動物愛護の現場で(弁護士 真早流 踏雄)」

動物愛護法等は、人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的としており、その方針に沿って、地方公共団体等では、動物の管理施設を設け、動物の保護・管理・譲渡等の事業を推進しています。
私もこれまで何度も犬や猫を飼い、随分と心が癒されましたので、動物を大事にしたいと思っていますし、飼主のない動物が殺処分されるような事態は無くなって欲しいと願っています。
ところで、Aさんは、動物愛護の活動に参加したいと思い、動物の管理施設でボランティアとして働き、動物のお世話をしてきましたが、ある時、動物の管理施設のケージから逃げ出した犬に、突然、手などを咬まれ、指の先端を食いちぎられる大怪我を負いました。
Aさんの怪我の補償を巡って関係者との話し合いが行われましたが、それはAさんにとって思いもよらないものでした。
動物の管理施設を運営している県は、実際の管理業務は外部団体のBに委託しており、県には責任がないとAさんに説明されました。
他方、Bは、補償する能力がないと説明し、Bが加入していた保険はAさんの怪我を補償できるようなものではありませんでした(Bは間もなく管理業務を止めてしまいました)。
結局、Aさんの怪我の補償をしてくれる者がいないため、Aさんは、弁護士に依頼して、県とBを相手に裁判を闘うことにしました。
裁判では、主に県側から、責任を負うべきはBで県には責任がないこと、県とBとの間には事故が起きた時はBが責任を取るとの約束があるといった主張が出され、しかも、犬がケージから逃げた時のAさんのやり方が悪かったとAさんを傷つけるような主張までされました。
Aさんは、動物の管理責任者としての責任が県及びBにあることを主張していき、この際、Aさんが裁判の前に情報公開法を使って県側の情報を取得されていたことが大いに役に立ちました。
1審、2審、最高裁とも、Aさんの主張を全面的に認め、犬がケージから逃げた時のAさんのやり方に問題はなかったことも認めたうえで、県とBに対して損害賠償を命じました。
この裁判を振り返り、今回のような事故が起きることは動物を扱うのであれば当然に予想できることですから、動物愛護の現場で働く者が安心して働けるように、管理責任を明確にするとともに保険を充実させるなどのきめ細かな対応が求められていると考えます。

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