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略式手続ってご存じですか?(弁護士 新福 宏)

  • 2013.3.19

初めまして。弁護士の新福と申します。
私は,一度検察官として働いたという多少変わった経歴を持っていますので(俗に言う「ヤメケン」です。),ここでは刑事事件の手続の1つをご紹介したいと思います。

*なお,意見にわたる部分は私見であることを,先にお断りしておきます。

今回お話ししたいのは,あまり世間に知られていないと思われる略式手続についてです。
略式手続について簡単に言いますと,通常の法廷で判決を下すのが正式裁判なのに対し,手続が簡略化されたものになります。
特に重要なのが,①被疑者(俗に言う容疑者)が裁判官と直接会うことがなく,言い分を聞いてもらう機会がないこと,②弁護士による事件のチェックがなされないこと,だと思います。
この略式手続によることができるのは,罰金又は科料の事件だけです。
そして,罰金又は科料の事件の場合,被疑者段階(起訴される前のことです)では国選弁護人がつかないこともあるのです。
ですので,弁護人に全く相談することなく,裁判官にも言い分を聞いてもらうことなく,正式裁判の判決と同じような効力を受けてしまうのです。
特に危険なのが,略式命令が出ると身柄が解放されます(要は,警察に捕まっていたのが出してもらえる)。
ですから,罰金を払えば警察の留置施設から出られるのなら,真実に反していても,嘘をついてもいいと思う人が出てくるおそれがあるということです。
普通の精神状態であれば,前科がつくのは困ると思うでしょうが,身柄が拘束されると普通の精神状態ではいられないこともあります。
じゃあ,一体どうすればいいの?というと,略式命令が出た後でも,14日以内であれば正式裁判の申立ができるのです。
正式裁判の申立をすれば,通常の正式裁判をすることになるので,弁護人に事件について検討してもらうことができますし,裁判官に直接言い分を聞いてもらうこともできます。
もちろん,真実に合った内容であれば,簡易な手続で済ませても問題はありませんので,不服がある方に限ってということです。
略式手続について,少しでもご参考になれば幸いです。