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遺言について(その6)(弁護士 松浦 里美)

  • 2013.10.10

まず,自筆証書遺言ですが,その名のとおり「遺言者が,その全文,日付,名前を自分で手書きし,印鑑を押したもの」です。法律上の要件はそれだけです。封筒に入れて封をしていないものでも,上記の要件を満たせば有効な遺言書になりえます。ただし,自分が亡くなったあとに「これが遺言書だよ」と周りの人に理解してもらうためには,やはり,封筒に入れて表面に「遺言書」と書いておくのが一般的であり,望ましいといえます。
自筆証書のよい点は,①お金がかからないし,②自分が話をしなければ,遺言を書いたことさえ秘密にすることができる,という2点にあります。
一方,自筆証書で困る点としては,①遺言の内容に不備(不完全な部分)があったときに,遺言全体が無効になったり,自分が思ったとおりの結果が実現されないということがあります。遺言のお作法が守られていない可能性があること,これが一番の問題点です。パソコンで作った自筆証書遺言は,いかに内容が適切であっても,「自筆」ではないため,有効な自筆証書遺言として扱われませんのでご注意ください。もう一つ,②誰かが無断で遺言書の内容を書き換えてしまったり,隠してしまうということもありえます。
次に,公正証書遺言についてお話します。これは,公証人役場で,自分が「こんな遺言を作りたい」と話してもらえれば,公証人が遺言書を作成し,公正証書として役場で保管してくれるというものです。公証人,という専門家が作成してくれるので,遺言のお作法を守っているかしら?という心配をする必要もありませんし,公証人役場で保管してくれるので,遺言書の内容を書き換えられたり隠されたりする心配もありません。
一方,公正証書遺言で困る点としては,公正証書を作成するときには2名の証人がいるのですが,①おしゃべりな人を証人に頼んでしまうとい,証人から他の人へ遺言の内容が漏れてしまうという危険性があります。そのほかに,②公証人に遺言書作成をお願いするための費用がかかるという点があります。
最後に,秘密証書遺言です。これは,遺言者が自分で作った遺言書に封をし,それを公証人役場に持って行って,公証人に「遺言であること」を証明してもらうというものです。前にお話しした公正証書遺言と同じく公証人役場が絡んできますが,公正証書遺言と異なる点は,秘密証書遺言の場合,遺言を作るのは自分自身であり,公証人は全く遺言書の内容にタッチしないという点です。
秘密証書遺言のよい点は,公証人すら内容を見ることはないわけですので,①遺言の内容を秘密にできるところと,封をして公証人役場で保管するので②内容を勝手に書き換えられることがないという点です。
一方,秘密証書遺言で困る点としては,自筆証書遺言と同じく①自分ひとりで遺言書を作るので,遺言のお作法がきちんと守られているか,という心配がありますし,その他にも②公証人役場の費用がかかる,ということがあげられます。
3つの遺言の種類がありますが,どれも互いに似ている点と,似ていない点があることがご理解いただけると思います。上で書いた以外にも,例えば,自筆証書遺言と秘密証書遺言は,どちらも自分自身で遺言を作成するという点では同じですが,自筆証書遺言と違って,秘密証書遺言の場合には,遺言書の内容をパソコンで作成することが可能です。