今年10月17日,最高裁で,参議院議員通常選挙において選挙区間の投票価値の較差が最大5倍に達していたことについて「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていた」と指摘する判決が出されました。投票価値の不平等の問題(議員定数不均衡の問題)に関しては,以前から何度も司法判断が出されておりますが,人は皆平等であって,選挙価値も等しくあるべきですから,議員定数不均衡は是正されなければならないというのはその通りで,異論はないところでしょう。
ただ,実際のところ,議員定数不均衡を是正するためには,どうすればいいのでしょうか。
1つには,議員定数を増やしてしまうことが考えられます。議員定数1億2000万なら,完璧な人口比率を達成することができます。しかし,この考えに同調する人はだれもいないでしょう。
次に,日本全国を単一の選挙区にすることでも,議員定数不均衡の問題は消滅します。しかしこれをやってしまうと,全国的な知名度のある人,あるいは全国レベルで選挙活動できる資金力のある人だけしか議員になれないことになるでしょう。
完全な比例代表制をとっても議員定数不均衡は解消すると思いますが,無所属の人が議員になれないという問題もありますし,選挙公約と実際の行動が激しく乖離するような今の政党を前提にして,政党主体の選挙制度にかえてしまうのはいかにも不安があります。
いずれにしても,一筋縄ではいかない問題であることは間違いなく,今後も議論が尽くされなければならないと思います。ただ,ここで私が気にしているのは,都会に人口が集中している今の日本で,忠実に人口比率に応じた議員定数を実現しようとすると,どうしても,地方の定数枠を都会に移してしまおうという話になりがちではないかという点です。
「投票価値の平等を実現する」という美名のもとに地方の切り捨てが行われたりしないよう,十分に監視していくことが必要です。